講演会・セミナー実績 / 2012年
2012年
第44回中部社研定例講演会
テーマ | 「農政の動向と日本農業の活路」 |
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日付 | 2012年12月05日(水曜日) |
会場 | ウェスティンナゴヤキャッスル |
講師 | 名古屋大学大学院生命農学研究科 教授 生源寺 眞一 氏 |
生源寺氏は、食料自給率の観点から日本農業の歩みを振り返った後、混迷している農政にどう向き合うべきか、また、日本農業が今後生き残るための活路としてはどのようなものがあるかについて解説されました。
食料自給率については、1980年代半ばまでは食生活の変化が自給率低下の要因となっていたものの、平成になってからは農業生産の縮小が自給率低下の主因となっていると説明され、自給率の低下に伴い、食料の絶対的供給力も低下していることが問題であると指摘されました。
次に、農政については、「食料・農業・農村基本法」が1999年に制定され、「効率的かつ安定的な農業経営を育成する」ことを掲げて農政改革に着手したものの、2010年の基本計画で小規模経営・兼業農業の継続が強調され、基本法と異なる方向性が志向されたことにより、日本の農政は迷走状態に陥っていると説明されました。そして、農業政策のもととなる基本法を見直すことなく、基本計画レベルで政策を転換することは非常に危険であり、農業政策のブレが日本の農業の力を弱めるリスク要因にもなっていることを指摘されました。
また、経済連携問題については、本来、経済界と農業界はお互いに支え合う関係にあるべきであり、両者の対立関係を解きほぐし、冷静な議論に組み立て直し、国民からブレのない理解が得られるために、筋のとおった施策が必要であることを強調されました。
最後に、日本の農業の活路については「経営の厚みを増す」ことが大切であり、具体的事例として、川下の食品産業(加工・流通・外食)との連携や並行して流れる観光・体験・交流などの産業への多角化や施設園芸などの集約型農業と土地利用型農業を組み合わせて行うことが効果的であると紹介されました。
当日は約120名の方が熱心に聴講されました。
観光品質基準研究報告会
テーマ | 観光品質基準の基本的考え方とその評価方法、雪国観光圏での実践例 ~観光品質の向上により、さらなるインバウンド拡大を~ |
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日付 | 2012年10月11日(木曜日) |
会場 | 愛知県産業労働センター(ウインクあいち) |
講師 | 研究報告Ⅰ:「観光品質基準の基本的考え方とその評価方法」 公益財団法人中部圏社会経済研究所 代表理事 小林 宏之 研究報告Ⅱ:「雪国観光圏での実践例」 雪国観光圏事務局プランナー 株式会社いせん 代表取締役 井口 智裕 氏 |
当財団代表理事の小林宏之より、観光品質基準策定の背景と目的、海外における宿泊施設格付け・品質認証の仕組み(ニュージーランドにおける「クォールマーク制度」)、観光品質基準策定の基本的考え方、観光品質基準による評価方法の概要などを説明し、その後、新潟・群馬・長野の三県にまたがる広域観光圏「雪国観光圏」事務局プランナーの井口智裕氏(株式会社いせん代表取締役)より、インバウンド向けプロモーションを行うにあたり、当財団の観光品質基準を活用して50軒の宿泊施設を対象とした品質評価を実施し、英文パンフレットやホームページにその評価結果を掲載した報告がありました。
熱意あふれる報告に対して、活発な意見交換が行われ、会場に集まった約70名の聴衆の方々も熱心に聞き入っておられました。
第43回定例講演会
テーマ | 「世界の構造転換と日本の進路」 |
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日付 | 2012年09月24日(月曜日) |
会場 | ウェスティンナゴヤキャッスル |
講師 | 一般財団法人日本総合研究所 理事長 寺島 実郎 氏 |
寺島氏は、最新の世界のエネルギー動向として、米国のエネルギー投資がシェールオイルへシフトしていること、また2010年代にはエネルギー自給体制を確立し、中東に依存しなくても済む構造になるとの見方もあり、そのことが米国のアジアシフトの背景になっていることなどを紹介されました。
また、時事問題として最近の尖閣問題における対中国・米国との関係においては、日本自身が戦略性をもって近隣の国々との関係を踏み固め、日米同盟を一つの軸としながら、日本の主体的な外交・国際関係を組み立て直さなくてはならない大きな転換期にあることなど、示唆に富んだお話をされました。
当日は約220名の方が熱心に聴講されました。
中部社研 研究報告会&シンポジウム
テーマ | 名古屋大都市圏の未来~リニア中央新幹線の開通を契機として~ |
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日付 | 2012年09月20日(木曜日) 14:30~17:00 |
会場 | ウインクあいち 1002会議室 |
講師 | 研究報告:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 黒田達朗 氏 東京都市大学都市生活学部 教授 小林重敬 氏 |
リニア中央新幹線の開通を見越した「名古屋大都市圏の未来」をどう描くかについて、研究報告会とシンポジウムを開催しました。研究報告会では、昨年度の調査研究で明らかにした「社会経済データから見た当地域の特質」や、新経済地理モデルを用いて計量的分析を行った「リニア中央新幹線の当地域への経済的影響」についての報告が行われ、基調報告では、リニア中央新幹線の効果を当地域が最大限に活かすために重要となる「名駅地区」の将来像の参考として、国内のいくつかの駅前地区再開発事例をご紹介いただきました。
シンポジウムでは、研究報告や基調報告を受けて、名古屋大都市圏の拠点としての名駅地区の役割やそのあり方、そして国内外での事例を踏まえながら、魅力的ある名駅地区をつくるためには、駅の整備に留まらず、周辺地区を含めた大規模な開発が必要であるなど、活発な意見交換が行われ、会場に集まった140名の聴衆も熱心に聞き入っていました。
第42回定例講演会
テーマ | 「これからの日本経済への処方箋」 |
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日付 | 2012年02月06日(月曜日) |
会場 | ウェスティンナゴヤキャッスル |
講師 | 株式会社NTTデータ経営研究所 所長 齋藤 精一郎 氏 |
「これからの日本経済への処方箋」と題し、定例講演会を開催しました。
齋藤氏は、今年の日本経済は、東日本大震災の復興元年で復興需要が出てくるものの、最近の家電メーカーの不調をはじめ、日本を支えてきた重化学工業なども先行きが見えない状況にあること、そして、今年も5つのリスク(ユーロ危機、新興経済の成長屈折、超円高の持続、税負担の増大、政治の漂流化)が経営にのしかかり、今後5~6年のうちに日本の企業が復活して、活力を取り戻さなければ、ギリシャのような危機に陥ると説明。
そして、この危機を突破する方策として、企業は今までの事業構造を抜本的に改革し、新しい事業構造を構築する以外にはないこと、また、「輸出立国」に代わる新たな経済立国モデルとして、アジアなどの新興経済で既存の日本の技術を活用してあげた利益を国内に持ち帰り、高度な製造・研究開発拠点をつくるという「両生型」の海外投資立国、そして地域活性化の観点からは「自立型」の地域経済圏の確立が不可欠であることを提言された。
航空・空港に関するシンポジウム
テーマ | 「新しい航空ニーズの発掘に向けて~LCCその先にあるもの~」 |
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日付 | 2012年01月30日(月曜日) |
会場 | 名古屋銀行協会 2階 201号室 |
講師 | 基調講演:東京工業大学大学院理工学研究科准教授 花岡 伸也 氏 パネルディスカッション: 財団法人中部産業・地域活性化センター研究顧問 総括:三重大学名誉教授 伊藤 達雄 氏 |
近畿圏、首都圏で展開しているLCCを主眼に中部国際空港を中心とする中部広域圏の見通し及び航空ネットワーク拡充のあり方を議論し、国際拠点空港や航空交通の意義と役割を広く社会に普及・啓発することを目的に開催した。
東京工業大学 大学院理工学研究科 国際開発工学専攻 准教授の花岡伸也氏によるアジアのローコストキャリアの展望と課題に関する基調講演では、LCCの基本が効率化の向上によって低い運航費用を実現し、低価格かつサービスが簡素化された航空輸送サービスを提供する航空会社であると聴講者に分かり易い説明が成された。さらに世界の航空自由化・オープンスカイ空港間の競争が激化している現況を紹介するとともに今後の我が国におけるLCCの展開、動向に加えオープンスカイ、大都市圏の空港、地方空港それぞれの経営のポイントついて所見を述べられLCCを正しく理解するには先ず乗って体験する事と締めくくった。
基調講演に引き続いてのパネルディスカッションでは、各パネリストからLCCの本質と
は何か、LCCとコミューターとの違い、LCCはどのようにして航空需要を掘り起こしてき
たか、トータル航空サービスシステム(レガシー+LCC+コミューター)の名古屋都市圏、中部広域圏における構築への展望と航空需要発掘の方策など活発な議論が展開された。